歌集ぬばたま 豆本紹介

師の教え 聞けぬ子弟の 肉に盛る もぐさ一服 さじ加減にて
しのおしえ きけぬしていの ししにもる もぐさいっぷく さじかげんにて

漣の 道の果てより 迎え来る 遅きに失す 孤島の夜明け
さざなみの みちのはてより むかえくる おそきにしっす ことうのよあけ

思い出と ふたり静かに 雪見酒
おもいでと ふたりしずかに ゆきみざけ

新雪の 下にまどろむ 夢の庭
しんせつの したにまどろむ ゆめのにわ

白妙の 雪の小道を 行く馬の 背にぞ降り積む 雪や清らに
しろたえの ゆきのこみちを ゆくうまの せにぞふりつむ ゆきやきよらに

静かなる 病の床に 手折られし 断罪の花 咲かず散り落つ
しずかなる やまいのとこに たおられし だんざいのはな さかずちりおつ

彷徨いて 流れ着きたる 深き森 醒めぬ夢路の あおい楽園
さまよいて ながれつきたる ふかきもり さめぬゆめじの あおいらくえん

遠いひと 同じく照らす 月見山
とおいひと おなじくてらす つきみやま
気持ちが離れてしまった「遠い人」と記憶の中の「遠い日と」を掛けています
W解釈
「自分も遠いこの人も月が同じように照らす月見に行った山で」
「記憶の中の遠いあの日と同じ月が照らす月見に行った山」

空蝉の 殻道々に 土用丑
うつせみの からみちみちに どよううし

物言わぬ 花よ愛ずるな 花嫁を 端読めば知る 花よ芽吹くな
ものいわぬ はなよめずるな はなよめを はなよめばしる はなよめぶくな

物言わぬ 花嫁ズルな 花よ芽よ 花嫁は知る 華よ目拭くな
ここまで意味不明だと堂々と言える「意味は各自考えること」

せせらぎに 託す言の葉 瀬を下り 愛しき人へ 待つ身悲しと
せせらぎに たくすことのは せをくだり かなしきひとへ まつみかなしと

うつせみの 世の広きみち 行く身には 渡る日月の 時ぞ短し
うつせみの よのひろきみち ゆくみには わたるひつきの ときぞみじかし

一夜にて 滅びし里に 長く引く 白き煙と 子等の泣き声
ひとよにて ほろびしさとに ながくひく しろきけむりと こらのなきごえ

桜舟 愛しき人の 言運び 妹待つ里へ 吾を誘う
さくらぶね かなしきひとの ことはこび いもまつさとへ われをいざなう

帰り来よ 旅にしあれど な忘れそ 変わらぬ瀬音 我が待つ桜
かえりこよ たびにしあれど なわすれそ かわらぬせおと わがまつさくら

とめどない 川と涙と 散る桜 長閑ならざる 春の水面に
とめどない かわとなみだと ちるさくら のどかならざる はるのかわもに

苦の土塊 憂い悲しみ 孕みつつ 山辷り落つ 天の涙に
くのどかい うれいかなしみ はらみつつ やますべりおつ てんのなみだに

書を離れ 歩む光の 桜道
しょをはなれ あゆむひかりの さくらみち

いつか獲る 見上げる空の 鰯雲
いつかとる みあげるそらの いわしぐも

幸も禍も 共に在り綯う 人の世の 理知れる 事ぞ幸い
さちもかも ともにありなう よのなかの ことわりしれる ことぞさいわい

つつかれて 粉噴く饅頭 見出され 粉噴く饅頭 夢も現も
つつかれて こふくまんじゅう みいだされ こふくまんじゅう ゆめもうつつも

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